私はサン・テグジュペリの「星の王子さま」という本が好きで、この本の中にはいろいろな思いがあり、
大人になってから読むと人生の教訓が詰まっていることに気づかされました。
この物語の中でも、星の王子さまとキツネが友達になるところが特に好きですね。
星の王子さまがキツネに「遊ばないか?」と言い、
「おれ、あんたと遊べないよ。飼いならされちゃいけないんだから」とキツネは言います。
王子「飼いならすって、それ、なんのことだい?」
キツネ「よく忘れられることだがね。仲良くなるっていうことさ」
王子「仲良くなる?」
キツネ「うん、そうだとも。おれの目から見ると、あんたはまだ、今じゃ、他の十万もの男の子と別に変わりない男の子なのさ。
だから、おれはあんたがいなくなったっていいんだ。あんたもやっぱり、おれがいなくなったっていいんだ。
あんたの目から見ると、おれは十万ものキツネと同じなんだ。だけど、あんたがおれを飼いならすと、おれたちはもう、お互いに離れちゃいられなくなるよ。
あんたはおれにとって、この世でたった一人の人になるし、おれはあんたにとって、かけがえのないものになるんだよ…」
キツネ「おれと仲良くしてくれたら、おれはお日様にあたったような気持ちになって暮らしてゆけるんだ。
あんたの足音がすると、おれは音楽でも聞いている気持ちになって穴から外へ這い出すだろうね。
麦畑なんか見たところで、思いだすことって何もありゃしないよ。だけど、あんたがおれと仲良くしてくれたら、そいつが素晴らしいものに見えるだろう。
金色の麦を見ると、あんたを思い出すだろうな」
というように話しをしているうちに仲良くなって、別れの時がやってきます。
キツネ「もう一度、バラの花を見に行ってごらんよ。あんたの花が世の中に一つしかないことがわかるんだから。
それから、あんたがおれにさよならを言いに、もう一度ここに戻ってきたら、おれはおみやげに、ひとつ、秘密の贈り物をするよ」
それから、戻ってきた星の王子さまにキツネが言いました。
キツネ「さっきの秘密を言おうかね。なに、なんでもないことだよ。
心で見なくちゃ、ものごとはよく見れないってことさ。かんじんなことは、目にはみえないんだよ」
岩波書店「星の王子さま」:サン・テグジュペリより
このお話の中にある、初めは十万ものキツネと同じなのに、友達になってからは、この世にたった一匹しかいないキツネになるということを知るのですが、
皆さんの子たちも他の人から見ると多くのペットとしてしか見えないのに、「飼いならす=仲良くなる」と、この世にたった一匹しかいないかけがえのない存在になるのです。
話しの中でも出てくるのですが、人間はみんな違った目で同じものを見ているものです。
ペットと暮らしたことがない人からすれば、他の十万ものペットと同じに見えるから、その子がかけがえのない存在であったとは見えず、
「たかがペットのことで…」と些細なことと思えることもあれば、
心理学者などの学術面からすれば、あくまでも心理的な事象で物事への反応として見えるから、その子を失った悲しみが深いものだと分からず、
「ペットロスの心理的背景は〜」と心理分析するだけでしかないのです。
ペットの人気があり需要があるからと、ペットビジネスをする人からすれば、ペットの姿はお金のように映っていることもあれば、
ペットショップでペットが売られていることから、ペットショップで買えばいいのだからと考え、
ペットを失って悲しむ人へ「またペットを買えばいい」と考えてしまうこともあり、十万ものペットと同じく見えてしまうのでしょう。
人によっては、ペットが心の拠り所だなんて、なんて淋しい人だと思うこともあり、
動物を人間よりも格下の存在と見下し、人との関係が作れない人として思われることもあります。
ペットを飼うということは、飼いならすことであり、飼いならすということは仲良くなるという意味で、
ペットたちと心を通い合わせた者たちからしてみると、あの子たちはかけがえのない存在であるにも関わらず、
他の人たちから見れば十万ものペットのうちの一匹でしかなく、心ない人たちにはこのことを理解することができないものです。
人間も動物も同じ命には変わりなく、お互いに通い合わせた愛情にも何の違いもなく、
種族を超えて、お互いを思い合い、お互いを愛し合い、共に素敵な心を分かち合ってきた者なのです。
大切なことは、目には見えないのですよ。
大切なことは、心の目で見なくてはなりません。
「大切なことは目に見えない。心の目で物事を見ましょう!」
物語の続きに、キツネが王子さまと別れる時に「泣いちゃう」と言いました。
すると、王子様は
「ぼくは、きみにちっとも悪いことをしようとは思わなかった。でも、泣いちゃうんだろ」
「じゃ、何もいいことはないじゃないか」
というように話しますと、キツネは
「いや、ある。麦畑の色があるからね」と言うのです。
大好きな者との別れでは、悲しくて涙してしまいますよね。
愛するペットとの別れにおいて、悲しくて悲しくてただただ涙が流れますよね。
でも、あの子たちは別れることについて悪気はないのです。
私たちを悲しませようとしている訳ではなく、
私たちを苦しませようとしている訳ではなく、
それなのに、私たちは悲しみで心は沈み、苦しみで心を痛めてしまい、
このままでは何もいいことがなく、出逢わなければよかったということになってしまいます。
泣いちゃうのは大好きだからで、悲しいのは愛しているからで、苦しいのはそれほどまでに思いがあるからで、
目の前から愛しい姿がなくなってしまうことが、なおさら辛いことなのです。
でも、麦畑の色と同じように、皆さんの心には色褪せることのない楽しい一時は思い出として心に残っております。
麦畑を見れば、あの子たちとの楽しい暮らしを思い出すことができます。
麦畑を見ずとも、心の中には穂先の実った豊かな麦畑と同じように、人生を彩り、豊かにしてくれた、思い出がいっぱい実っております。
喜びに満ちた楽しい時間を共に過ごしてきたからこそ、涙してしまうのですけどね。。。
「大切なことは目に見えない。心の目で物事を見ましょう!」
星の王子さまは、星に残してきたバラのことについて、こんなことを言っております。
「だれかが、何百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花が好きだったら、
その人はそのたくさんの星を眺めているだけで幸せになれるんだ」
大切な教えのようでなりません。
皆さんの愛するペットたちは、この世にたった一匹のかけがえのない存在であり、
同時に、すべてのペットたちも同様に愛するべきかけがえのない存在なのです。
うちの子と同じように誰からか愛されている愛しき者で、
その他の十万ものペットたちも愛しい存在で、その他の何百万、何千万もの動物たちも、
あの子と同じかけがえのない命なのです。
すべての命は尊いもので、人間だけが優れている訳ではなく、
すべての命はかけがえのない存在であり、種族や属性による愛情の違いなんてないのです。
「大切なことは目に見えない。心の目で物事を見ましょう!」
愛するペットを喪った人たちが、10万のペットの中の1匹を大切にしたならば、
その他の99,999匹のペットたちも大切にできる優しい人になっていただきたいと思います。
私たちが交わした一つの小さな絆から、より多くの仲間への絆となり、さらに大きな地球との絆へと至るよう、
とても大切な心の絆、命の大切さをあの子たちは涙でもって教えてくれたのです。
同じく仲間たちのことを思ってくれることは、とても嬉しく、とても誇りに思うことでしょうね。
あなたに愛されたことのある者たちは、あなたの優しさがお日様にあたっているように気持ち良く、
他の子たちへあなたの優しさを分けてくれたなら、金色の麦畑を見るように素敵に想えることでしょう。
皆さんにとって、あの子たちは、星の王子さまだったのではありませんか。
サヨナラのときに、秘密の贈り物をされたのではありませんか。
「大切なことは目に見えない。心の目で物事を見ましょう!」
私にとっては、ペットたちは大いなる教えを与えてくれました。
世界の宗教の四聖人たちが伝えたかったことを、彼らは小さな体で精一杯教えてくれました。
ひとつのものへの愛情が、すべてのものへの愛情に変わることを、
私の飼ってきた=仲良くなった子たちは教えてくれました。
私はあの子たちとのサヨナラの時に秘密の贈り物を貰いました。
大切なことは目に見えない。
心の目で見ることの大切さを…
皆さんも、あの子たちからサヨナラの時に秘密の贈り物をされたことでしょう。
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